カテゴリ:行動科学( 12 )

行動科学の利用範囲

行動科学の利用範囲

部下の獣医師がうまく診療出来ない時、知識がないのか、知識が不足なのか、知識はあるが技術が未熟なのでできないのか、知識も技術もあるのにやらないのか。技術は、どの部分が未熟なのか。優秀な獣医師の行動と比較して「できていること」「やっていないこと」「できているがやり方が未熟なこと」「できるのにやらない」の区別をすることで、出来ない理由を整理することができます。


上司は、そのできない部分に焦点を当てて指導することで、より具体的に効果的に指導できます。

私が育ってきた時代も今もそうですが、上司が新人を教育する時、新人がうまくいかない時は「早く手術の判断をしなかったからだ」とか「しっかり、縫合しなかったからだ」とか「術後の消毒が悪かったからだ」とか「アクシデントに対応する準備をしてなかったからだ」とか「テキパキしてないからだ」とか「場数を踏まないと無理だな」など重要なポイントは突いているのだけど、具体的に何をどうするのかを示してないので新人が習得するのに時間がかかり、また新人によって習得できない場合もあります。


NOSAIの診療所では、中途採用が時々あります。他の診療所で数年間経験を積んでいるから、全部任せて大丈夫だろうと思っていると、実際は細かいところでやり方や考え方が違っていることは頻繁に起きています。人によって技術と知識の習得状況が違い、それが診療の質の低下と農家からのクレームにつながっています。他から移動してきた人、経験を積んでいる人ほど入念なチェックが必要です。新人獣医師が採用され、しばらくの間は先輩獣医師について回りますが、数人の先輩に付くと、付いた先輩によってやり方も考え方も違うので、どれがいいのかよくわからなかったりします。

診療所内でもベテランと言われる獣医師も、得意な分野と不得意な分野、興味のある分野と興味のない分野は誰でもあり、人によって知識と技術にバラツキがあります。診療所内の獣医師で質の高い診療かどうかの確認にも使えます。


上司の「部下が当然できるはず、知っているはず」は禁物です。いくらなんでもこれくらいは知っているだろう、こんなことはできて当然だなどの上司の思い込みが部下や後輩の成長にブレーキをかけています。優秀な獣医師の行動と比較して、「できていること」「やっていないこと」「できているが、やり方が未熟なこと」の割り出しをます。仕事の質と精度を高めることは、すべての獣医師にとって共通する課題です。

大動物獣医師の教育は、一般的に先輩獣医師に数カ月ついて回り、少しづつ一人で診療を回るようにして覚えていきます。会社組織でも行われているオンザジョブトレーニング(OJT)です。実際の仕事をしながら覚えていく教育です。教育される側がクローズアップされがちですが、まず第一に、指導する獣医師の行動を分解し、「標準化」することが重要です。これが徹底出来ていないと、先輩獣医師によってやり方や考え方が違い、教育される方が混乱をきたしてしまいます。ですので、OJTを始める前に必ず指導内容を細かく分解したマニュアルを作成し、指導する獣医師の間で共有することが必要なのです。そして、実際にOJTに入った後も、指導内容が標準化できているかどうかの確認を定期的に行うことが大切です。

診療所で当たり前に使っている言葉ほど、行動の分析と具体的な表現への置き換えが必要です。例えば「しっかりと消毒する」「きれいな白衣を着る」「長靴をきれいに洗う」「農家への説明を充分にする」などです。たとえば「しっかりと消毒する」ということは、ほとんどの獣医師が注意している事です。ところが獣医師によって微妙に手順が違っていたリ、道具や薬が違っていたりして、消毒の質と精度が違っています。「言葉の定義」というのは、多くの企業でも基礎的な確認事項として重要なポイントです。

診療車の薬や道具の置き方は、各自が考えて置いていますが、診療でどんな行動をするかを考えると、ある程度の配置が共通することだと思います。注射器を取り、針を付け、薬を注射器に入れ、空のアンプルやビンはゴミ箱に入れる。運転席から降りて診療を終わって車に乗り込むまでの作業動線、雨の時の作業動線。この行動の時に、時間を短く、手数を少なくし作業性をよくするには、何をどこに配置することがいいのかを考えるのも行動科学です。

また他のことにも使えます。自分で決めたことが、なかなかできない。3日坊主で終わる。目標を作っても、途中で挫折する。農家に受けのいい話ができない。農場内で従業員のモティベーションを上げられない。獣医の勉強が続かない、獣医関係の情報をまとめられない、診療車内での移動時間を有効に使い方法など。これらを解決するためには、どんな行動をすればいいのかにも行動科学は使えます。


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by agricoach | 2017-01-10 20:47 | 行動科学

行動科学

行動科学とは

動物行動学というのがありますが、それは動物の行動生態学、生理学、動物社会学、心理学、遺伝学、進化学、数理生物学など、動物の行動がどんな環境や周囲の状況でどう行動するのかを調べます。獣医師がかかわることは小動物、産業動物の分野ですが、人が望むように動物に行動してもらうためには、どんな環境や刺激をするべきなのか、人と動物がお互いにストレスなく係るために必要なことなどを研究する学問です。

一方、それとは似たような言葉ですが、行動科学という考え方があります。動物の行動ではなく人間の行動を科学する分野です。これはビジネスの分野で利用されていますが、どうすれば成果を上げることができるのか、どうすれば効果的に技術や知識を伝えられるのか、部下の業績を伸ばすためには何が必要か、いいとは、わかっているけど、なかなか継続できない事をどうすればうまくできるのか、などの課題も多くの組織で共通しています。他の人に仕事を教える時に「うまくやる」とか「徹底する」とかでは、なかなか思うような効果が出ないのが多くの会社で直面する課題です。獣医師が行動科学を利用することで役に立つケースが多いと思います。

行動科学では教える内容を知識と技術に分けます。知識とは、聞かれたら答えられること。技術は、やろうとすれば、できることです。

例えば知識とは、補液をする時、どんな病気のときにどの補液剤をどの割合で、どれくらいのスピードで、何リットル入れるのか。ショック状態になった時の対応方法などです。


技術とは、脱水が著しく血管を確保しにくい患畜にどのように血管を確保することができるか、長時間補液する時に、牛の保定方法や補液のセットができるか、アクシデントが起きた時に処置できるかなどです。

行動科学では「すべての結果は行動の蓄積である」としています。「結果が出たのは正しい行動を続けたから。結果が出せなかったのは、間違った行動を続けたから。偶然が結果を左右することはない。」と考えます。

例えば、あるやり方で帝王切開をすると1.5時間かかり術後の母牛の受胎率が70%で。ほかのやり方では1時間で終わり受胎率は90%だったら正しい行動は、当然1時間で終わるやり方です。


また、子牛の死亡率が高い農場を指導する時、どの項目をチェックして、それをどう判断して、農家の具体的な行動をどう決めて、農家に実行してもらうために、どのように説明してやる気を引き出すために、どんな手法をとって死亡率を下げるのか。成果を出している獣医師の行動を観察していいと感じたら、どんどん真似をすればいいのです。ところが、それが、なかなかできないのです。


「一生懸命に頑張る」とか「根性でする」とか「きっちりする」などは行動科学では、目標とみなしません。数字と日時を入れることで目標とみなします。気合いや根性、意志の力だけでは人間は動き出せない、続けられない、と規定しています。


農場などにも、「整理整頓!」「きれいな農場!」などの標語がかかっていることがあります。でも、これで農場がきれいになるのなら苦労はいりません。重要なのは、整理整頓をするための行動を具体的に示し、習慣化させて、定着させることです。整理整頓とは、具体的行動の積み重ねがあって、はじめて成り立つものです。精神論をいくらぶっても意味がありません。なぜ整理整頓が実行に移せず、続けられないのか? ①目標自体に問題がある②目標は実現可能でも、『実行し続ける仕組み』がない、その原因はこの2点しかありません。


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by agricoach | 2017-01-10 00:44 | 行動科学


2冊目の本ができました。今回の本はイラストをいっぱい入れています。       メールは kagryt5297wexv@btvm.ne.jp まで。


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